「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」の作者の新作、「天使は奇跡を希う」(七月隆文著、文春文庫)を読了したので、今回感想を書こうと思います。(ネタバレがないように書いています)
「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」は心の残る本の1つで、映画版も見に行ったのですが、この「天使は奇跡を希う」も印象的な本になりました。
この記事の内容
■「天使は奇跡を希う」の特徴
「天使は奇跡を希う」は、ジャンルとしてはラブファンタジーという感じでカテゴライズできると思いますが、本作の特徴は、次の通りです。
○今治が舞台。しまなみ海道なんかも出てくる
もう9年くらい前になりますが、しまなみ海道とかドライブしたことがあります。行ったことことある人ならわかると思いますが、絶景です。観光で行ったことがある人は、情景が想像しやすいかと思います。
○一人称で、視点が結構変わる
この作品、人称が結構変わったりします。登場人物の良史の視点で書かれたり、優花の視点で書かれたり、成美の視点で書かれたり。
速読すると、ちょっと戸惑うかもしれませんが、違和感は特に感じることはありません。いろんな登場人物の視点を多く出すことで、登場人物1人1人の感情を深く書けている気がしました。
○希う天使の切なさを描く
結末はどうなるか、ハッピーエンドかどうかも、ここでは伏せておきます。本編が本格的に始まるのは、上の挿絵が出てきて以降です。
届けたくても届けることができない、恋する人への想いが、これでもかというほど、もどかしくて、切ない。
自分の身を投げ売ってまで奇跡を希う主人公の、恋と友情の物語。物語の完成度はかなり高いです。
■「天使は奇跡を希う」の感想
前述したように、読んでいて、もどかしく、とても切ない感じがしました。
ミッションを果たさないと、自分の好きな人が……、そして自分が……。好きな人を極限まで想い、ずっとその人のために思考し、でもそれを打ち明けることができないもどかしさ。
また、「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」同様、最後まで読んだときの印象が、読んでいる最中と変わってきます。
「あー。そういう話だったのかあ」と。作者の発想力とストーリー構成力は凄まじいと感じます。かなり綿密に構成を考えてから実際に原稿を書いているのではないかと想像します。
視点がいくつか変わっていますが、核心部分はヒロイン視点になってから。挿絵が出てきて以降は、ページをめくる手が止まらないのではないかと思います。
印象に残った強烈なセリフとか、そういうのはなかったですが、読んだ後に、どこか心が優しくなりそうな物語です。
【七月隆文の他の作品の書評はこちら】
■自分も小説を書くことにしました
自分も小説を書くことにしましたが、これまでの小説とは、一味違う小説です。