砕け散るところを見せてあげる|一読だけではわからないほど読者は騙される

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facebookで誰かが紹介していたので、「砕け散るところを見せてあげる」(竹宮ゆゆこ著、新潮文庫)を読んでみました。

感想としては、一読しただけでは少しわからない、ストーリーの構造が理解しにくいかもしれないと思いました。最初から、この物語には仕掛けがあると思って読まないと、ラストはついていけないかもしれません。

見事なトリックだと思います。でも、本の紹介に書いてあるとおり、「死んだのは、二人。その死は、何を残すのか」ということに注意を払って読んでいかないと、なかなか理解するのは難しいかもしれません。

ただ、読後に1つ言えることは、「見事に騙された」ということです。

■一気に読みたい小説

ストーリーの構造が頭から離れないように、この小説は一気に読んでしまう方が良いと思います。でないと、せっかくの衝撃のラストが理解できないと思います。

そして、登場人物に仕掛けがあるということを知って読んだ方がいい。でないと、クライマックスで頭が混乱することになります。

「砕け散るところを見せてあげる」というタイトルにインパクトがありますが、このタイトルにも意味があります。

ちなみに、出張帰りの電車の中で一気に読みました。一気に読みましたが、それでもクライマックスには「なんだなんだ?誰がどうなっているんだ?」と混乱しました。

しかし、それぐらい見事なトリックなんだと思います。推理小説でのトリックとはまた違います。

読者を騙し続けたという点で見事なトリックです。僕は完全にやられました。ただ、その答えがわかりづらいかもしれません。

■読み返すといいかも

読者を最後まで騙し続けた作品といえば、以前読んだ「イニシエーション・ラブ」を思い出します。この小説のトリックも非常に見事ですが、これは最後の二行でようやく騙されたことに気付きます。

この「イニシエーション・ラブ」も「砕け散るところを見せてあげる」も共通しているのは、読者の視点が変わってしまうことです。

「あれ?今まで読んでいたこの登場人物は、一体誰だったの?」という。ちゃんと伏線があるのだから、とても見事です。

「砕け散るところを見せてあげる」は、登場人物の設定が個性的だしイキイキしているので、スラスラを読み進めることができます。

その勢いでクライマックスに突入してしまったので、混乱してしまったのかもしれません。もう1回読んで見れば、「そういうことだったのか」と納得できると思います。

ただ、最後のラストは一読しただけでは、解けないパズルを解こうとしているもどかしさを感じました。このもどかしさは賛否あるかもしれません。

1度読んで「面白かった」では済ませない。もう1度納得させるまで読ませる。そういう物語、書く人はよく思いついたと思います。

通常の小説とはまた違った面白さを感じたい人、パズル感覚で読みたい人にはおすすめの1冊です。