学校の閉塞感から少しだけ抜け出して心を開く|小説「ヒトリコ」の感想

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主人公は教師から金魚を殺した濡れ衣を着せられ、熾烈ないじめの対象となった……。自分自身はこういう理不尽ないじめの経験はないのですが、なぜか、こういう学校や企業の閉塞感を描いた小説やマンガというのは読みたくなります。

これまで生きてきて苦痛に感じたことの大半は、この日本社会が生み出している閉塞感が要因だからかもしれません。

今回は、小学館文庫小説賞受賞を受賞した「ヒトリコ」という小説を読みましたので、その書評を書きたいと思います。

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■総評

深作日都子は小学5年生の時、教師から金魚を殺した濡れ衣を着せられ、熾烈ないじめの対象となった。そのときから日都子は、誰にも心を閉ざし、「みんな」には加わらない「ヒトリコ」として生きていく決心をする。(本文紹介より)

この冒頭で、いろんな生徒や先生を殺していく残酷なパニックホラーに発展していくか、もしくは登場人物が次から次へと早い展開で悲劇に見舞われるジェットコースター路線のストーリーを想像しながら読み進めましたが、この小説はどちらでもない。

登場人物の小学校高学年~高校1年までの、田舎の閉塞感たっぷりの学校社会を背景に描く、孤独だけど少しだけ光を感じるほろ苦い青春小説という感じ。屈折した登場人物は何人も登場しますが、それも前半が多く、中学、高校へと登場人物が成長するに従って、それも減っていく。

濡れ衣を着せられて強烈ないじめに合うという残酷なシーンは冒頭に出てくるし、中学での合唱コンクールも、すごい閉鎖的で息苦しい感じがするのですが、これといって大きな事件には発展していかない。

なので、昔のケータイ小説などにありがちだったような展開の早いドロドロなストーリー展開を期待してしまうと、どこか拍子抜けするかもしれませんが、それでもページをめくる手は止まることはありませんでした。

■関わらなくてもいい人とは、関わらない

この小説で何度も出てくるのが「関わらなくてもいい人とは、関わらない」という、孤独を決め込んだ主人公の言葉。

この言葉には、どこか共感するところがあり、自分も関わらなくていい人とは、関わりたくないほう。メリットのない人とは関わりたくないし、無理やり人の良いところを見つけたりして良好な人間関係を築きたいとも思わない。

むしろ、自分にとって無駄な人脈だと思えば、切り捨ててしまいたくなる方です。人間関係はシンプルであればシンプルであるほど心地いいからです。自分は一匹狼を好むタイプなのです。必要な人が必要なときにだけ集まればいい。

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しかし、読み進めていくうち、クライマックスの場面で主人公の心にわずかに変化が起こります。孤独と決め込んだ、閉ざされた心の隙間から、わずかに光が入り込むような感じ。

本当にちょっとだけの変化のように見えるのですが、読者をパラダイムシフトさせるには十分な展開です。

この物語を読み終えて、主人公は「関わらなくてもいい人とは、関わらない」という気持ちが続いているのでしょうか。もう少し関わっても良いかなぐらいに感じたのではないか。

そんな主人公のわずかな変化が読後の心地よさを生む、そんな不思議な余韻を与えてくれる小説です。

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