今回は嫌なうつ状態から抜け出す方法についてヒントが書かれた本の紹介です。自分も精神科に行くほどでなくとも、何回か似たような状況は経験してきました。
「うつヌケ」(田中圭一著、角川書店)は、長いトンネルから抜け出した人を取材したことを漫画にした本です。著者自身、精神科を転々としたり、症状が悪化したりしながら抜け出してきた経験の持ち主です。
今回、この本では、そんな嫌な状態から抜け出す方法について、印象に残ったところをいくつか書いていきたいと思います。
この記事の内容
■自分を好きになることでうつから抜け出す
まず、この本では、著者のうつ経験が書いていますが、著者自身のうつに至るプロセスは、実にシンプルなものでした。
自分に合わない職場で無理して頑張る
⇒うまくいかず自分をきらいになってゆく
⇒すると、きらわれた体(や脳)は心に対して反抗する
この「症状」こそ「これ以上ムリをするな」と体がはするアラートだったんです!!(P12より抜粋)
で、この対処方法も「自分を好きなる」というシンプルなもの。自分もこれがうつのメカニズムであり、抜け出す方法の基本だと思います。
というか、自分も会社員時代、同じような過程を経験してきました。心の中の拒絶反応がすごいんですよね。もう、何も考えられなくなりました。体を動かすのも辛いですし、ため息しか出てきません。
なので、結構自分を好きになることについて、本を読んだりもしました。自分では、自分を好きになる必要性があったことに気付いていたのだと思います。
自分を嫌いから、好きになるのは時間のかかることかもしれません。誰も自分のことをわかってくれないと感じることもあるかもしれません。でも、それは自分を見つめ直すチャンスなのかもしれません。
■壊れる前に逃げることでうつから抜け出す
自分に合わない仕事をしているのであれば、時には逃げることも必要だと書いています。ちなみに、僕も合わない仕事だと感じて逃げることにしました。
準備期間に長く費やしてしまいましたが、結果、会社を辞めて独立する決断をして良かったと思っています。
そりゃ「責任」も「立場」もあるでしょうけど、自分が壊れる前に「逃げる」道もあるんだ!(P32より抜粋)
■心は思っている以上に単純なもの
山の天気はとても変わりやすい。怖いくらい天気が怖いかと思ったら、急に青空になったり。登山を始めた人の気付いたことが印象的です。
私の心は自分が思っている以上に単純な作りになっているのだな…
晴れも曇りも代わる代わる周期的にやってくるわけで
不安な日も天気と同じくらいパタパタっと去っていくはず
「その程度のものなんだ」(P42より抜粋)
たしかに、これは言えると思います。心が折れそうになるほどのことがあったと思えば、数時間後には気分が楽になっている。似たようなことを経験した人もいるのではないでしょうか?
登山を始めた人は、登山中に感じたことと日常を照らし合わせることで、少しずつ気分が楽になっていったのだそうです。
■気分が落ちたら「人生の自習時間」と思い込む
気分が落ち込むと、やらなければいけないことも、手がつかなくなってしまうことがありました。
そういうときは、敢えてやらなくてはいけない作業の手を止めてしまうと良いそう。敢えて読書の時間にあててみるなど、自習時間にふさわしい「やるべきこと」を見つけておく。
気分が落ち込む自分を否定せずに従って、静かにできることをやってみるのも良いと思います。
■ネガティブな自分を肯定することでうつから抜け出す
ネガティブではいけない!ポジティブにいこう! 自己啓発書ではよく書いてあること。だから、つい無理やり自分をポジティブに持っていこうとしてしまうことがあります。
しかし、ネガティブはそんなに悪いことなのでしょうか? 無理やりポジティブに持っていって、メンタルが持続できるでしょうか?
普段ポジティブな人を見ていても、ずっとポジティブな人は見たことがありません。たまには落ち込んでいます。
では、ネガティブな気持ちをどう捉えるかが重要だと思います。著書ではこう書いていました。
物事を悪い方に考える人は危機を回避しやすく生き残る確率が高い!
(中略)
今私たちはネガティブなのはあたりまえ!だからネガティブな自分は優秀なのである!…くらいに自分を肯定していいと思うんです(P106より抜粋)
ネガティブな自分を受け入れて、客観的に見つめることは、結構重要だと思います。自分も、そうすることで、いずれネガティブな気持ちが嫌になって、抜け出す方法を自然と思いついたりすることがありました。
自分だけで溜め込むだけではなく、ネガティブなことをお互いに吐き出せる人間関係なんかも大事ですね。
■両親に電話することでうつから抜け出す
これは、少し勇気のあることかもしれません。著書では、「両親に、自分を大切に思っているかどうかを聞いてみる」という方法が紹介されています。
自分の場合は、「両親に感謝の言葉を伝えなさい」というワークをしたことがありますが、これがなかなか勇気のいる行動です。
両親だと、どこか恥ずかしくて、照れが入ってしまうんですよね。でも、勇気のあることほど実行すると、何か自分を縛り付けていたものが氷解することがあります。
自分も会社を辞める際、両親に猛反対されて、ちょっと嫌な気持ちになったことがありますが、この本を読んで、また原点に戻ってみようかなと思いました。
■必要とされていることを実感することで鬱改善
やりたいことをやることも幸せですが、必要とされていることを実感するのも幸せです。求められたことに対して応じて、対価を頂くのは本当に幸せなことです。
紹介されていたのは、東日本大震災時、かつて赴任していた気仙沼に何回か通っていた小説家の話。このとき、「次のはいつ出る?」「楽しみにしているよ」と言われて、自分が求められていることを実感したそうです。
必要とされていないと感じるから、人間はうつになります。自分も、必要とされていないと感じてきたから、長く憂鬱な時期を過ごしてきたと思います。
ここから抜け出すことで、大きな自信になるし、ようやく本当のポジティブさを身につけたりすることができる気がします。
■憂鬱とうまく付き合うことも大事なこと
うつトンネルと抜けた人でも、またうつ状態に戻ってしまうことがあるのだとか。この「突然リターン」が起こることは、自分もありますし、多くの人も経験あるかもしれません。
うつは「なる」ものじゃなくて
誰の心の中にも「眠っている」ものだと思うんです
(中略)
こいつらと上手につきあうことも考えよう(本文より抜粋)
個人的には上手に付き合うとは、憂鬱な自分を冷静に見ることだと思います。「憂鬱な自分が好き、これで良い」というのとは、また違います。
うつ状態はやってきたり去ってきたりするものです。再びうつ状態がやってきたら、自分を冷静に振り返り、どこか勘違いしてしまっていたことはないか、大事なことは忘れていないかを考える機会なのかもしれません。
うつ状態は、本当に嫌なものですが、一種の成長痛なのかもしれませんね。
〇関連記事
以下に、自分を好きになるための方法について書かれた本の書評を紹介します。どちらも良書なので、読んでみることをおすすめします。