今回紹介する本は「ありがトン」(さわとん作、アウチ!絵、サンマーク出版)という4コマ漫画を中心に構成されたコミックエッセイです。
ちなみに、読んだのは今から4年前と結構前だし、既に絶版になっているみたいで、Amazonでは中古で買えないです。
会社で出向したことがきっかけで、うつを発症した著者が大切なことに気付いていく過程を、親しみやすいブタのキャラクターで描かれたコミックエッセイで書かれています。
うつ病とまでいかなくとも、うつ状態で辛い経験をした人なら、「あ、この気持ちわかる」とか「そうなんだ、辛かったのは自分だけじゃないんだ」と思えるような、希望を持ちつつ心が暖まる本です。
この記事の内容
■この気持ちわかると思った箇所
〇主人公さわとんの小学校~高校時代
自分だけではないと思いますが、主人公と自分の少年時代の境遇が、少し自分と似ているように感じました。
・算数・数学が得意で、他のみんなより点数が良いと、みんなに認められてる気がした。
・偏差値の高い大学に合格すれば、社会人になっても幸せな生活を送れるような気がした。
・今考えると恥ずかしいけれど、他のみんなより頭がいいんだって思って気持ちよかった
たしかに今考えると恥ずかしいのだけれども、僕も中学~高校は少しこういう気持ちが強かった気がします。今考えると本当にバカげているし、くだらないことにこだわった少年時代だったと感じますが。
数学が得意だったのは、著書にも書いている通り、答えがはっきりしているから。もっと言えば、社会や理科に比べれば覚えることが少なくて機械的に問題が解けるから。ただそれだけの理由でした。
〇金曜日の夜から憂鬱
サザエさん症候群という、日曜日の夕方になると会社員は憂鬱になるという症状。誰でも経験したことがあると思いますが、本格的に会社が嫌いになると、こんなもんじゃない。
なんと、著書にかいてあるとおり、金曜日の夜から憂鬱だったりします。遅くとも土曜日の夕方には憂鬱になっています。仕事の憂鬱が頭から離れないのです。おそらくホッと一息つけるのは、退社する瞬間だけではないでしょうか。
〇朝早く目覚める
憂鬱な状態が深刻になると、寝付きはそんなに悪くないのですが、必要以上に朝早く目覚めます。
そして、何時間後の出社に備えて、非常に憂鬱な状態に縛られます。例えば朝4時に目覚めてしまえば、「あと4時間後には家を出て、5時間後には出社かあ……」みたいな。
その日に起こるであろう、様々な会社での憂鬱が呼び起こさせるのです。会社に精神を破壊させられると、これが毎日続きます。
■うつ状態を経験して気付いたこと
〇「ありがとう」と言われて
そもそもこの本のタイトルは「ありがトン」ですが、著者が電車でおばあさんに席を譲ったら、そのおばあさんは何度も「ありがとう、ありがとう」と言ったらしいです。その時に著者が感じたことが印象的です。
「もう自分なんか失格と思っていたけど、こんなぼくでも人の役に立てたって光がさしこんだ気分だった」(原文まま)
ありがとうって言葉は、人に自己肯定感を持たせる力があるということに、改めて気付きます。何気なく発している「ありがとう」の言葉は、もしかしたら誰かを勇気づけているのかもしれないですね。
〇支えあっていこう
著者はうつ状態を経験したあと、潰瘍性大腸炎で大腸を全摘出しますが、そこで気付いたことが印象的です。
みんなと違ったっていいんだよね。
無理してみんなに合わせようとしないで、
ぼくのからだみたいに、支えあっていけばいいんだよね。(原文まま)
集団は各々の個性の集合体であって、みんなが普通になることじゃないですからね。閉鎖的な企業社会で、最も忘れられていることではないかと思います。
大事なのは、人との違いを好きになれるかどうかだと、個人的に思っています。
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