よく保険を勧めてくる営業の人の殺し文句に、「病気になってからは入れないから、健康なうちに入りなさいよ、今から入れば月々の保険料も安くできるし」という言葉があります。
たしかに病気になると加入できない保険もあるので、一見すると理にかなったような説得に見えます。
それゆえに、健康診断で何も問題がないような人でも不安を煽られ、契約してしまうという人も多く見られるみたいです。
でも、この理にかなった殺し文句も、よくよく考えるとおかしな話です。
■参考文献
最近、生命保険に関する書籍で、「この本は良いこと書いてあるな」と感じた本を見つけました。
『生命保険は「入るほど損!」』(後田享著、日本経済新聞出版社)という本です。
正直保険に関する書籍って、なかなか良書を見つけることができなかったりします。というのも、「保険は必要な人が必要な期間だけ入っていればいい」というスタンスを徹底した書籍って意外と少ない気がしています。
この後田さんの本は、保険料の負担で家計を圧迫されている人にはとても参考になる本だと思うので、結構おすすめです。
今回は、その中でも、「第5章「セールストーク」「CM」「キャッチコピー」のツッコミどころ」のP136~138に書いてある内容をシェアして、「加入したくても入れない」の殺し文句について考えたいと思います。
■加入したくてもできない状況でも特に困らない
紹介した後田さんの本は、医療保険やがん保険が、確率論的に宝くじや競馬よりも割に合わないことをわかりやすく書かれています。
基本的に、掛け捨ての保険は損する可能性が圧倒的に高いのです。それでも入る必要があるとすれば、貯蓄で賄いきれないお金が必要とされる可能性がある場合です。
貯蓄で賄うことさえできれば、基本的に掛け捨ての保険に入るのは、大きなデメリットでしかないのです。
これは後田さんの本でも指摘しています。前段で書いた「保険料負担も少なくなるので、早めの加入をおすすめします」という殺し文句については、以下のポイントに沿って反論しています。
〇不確実性が考慮されていないセールストーク
この本では医療保険を例にしていますが、たしかに60歳で払い終わる医療保険の場合、30歳から入るのと、50歳から入る場合では、前者の方が安くなるそうです。
しかし、後田さんは、若い時期に入るということは、若いうちから長期間、保険料分のお金を好きに使える機会が失われるという見方も必要と書いています。
しかも、「若い時に加入するほど、一生涯の保障を約束する保険の内容が時代に合わなくなる可能性が高くなることも忘れてはいけない」と書いています。
たしかに、これはその通りだと思います。将来に不安を感じて保険に入っても、結局将来のニーズまでは予測できないのです。入る時期が早ければ早いほど、その可能性は高くなります。
あらゆるニーズに対応しようとして保険に加入すると、おそらく月々の保険料の支払いで家計が破綻するでしょう。
何といっても、若い時期に保険料の支払いに充てるという行為が基本的にもったいないです。だったら、その分貯蓄に回した方が、病気だけでなく、早期退職や結婚、出産、教育など、あらゆるニーズに対応できるような気がするのです。
〇保険加入が目的化していないか?
よく、何を目指しているかわからないような人をバカにする言葉として、「手段と目的が逆転している」という言葉がありますが、
この「病気になってからは入れない」という殺し文句は、まさに保険加入が目的化していると指摘しています。しかも、時代や環境変化に、保険は強くないことを意識するべきでしょう。
保険料が給付金として加入者に還元される割合は、せいぜい70%程度と著者は計算しています。(別途この本の書評で紹介します)
しかもさっきに書いたように、貯蓄で賄うことができれば、病気や死亡による緊急性は全然ないのです。
■まとめ
ということで、この本を読んで感じたことは、「保険に入りたくても入れない、でも貯金があればそもそも必要ない」ということです。
掛け捨ての保険は、あらゆるニーズに対応してくれるわけではありません。でも、自分で貯蓄して、投資信託でも買って資産を増やしていけば、あらゆるニーズに対応したお金が手に入るのです。
個人的には全然そっちの方が良いような気がします。
なので、このようなまやかしのセールストークに惑わされることなく、若い時期は保険のスキームを使わずに貯金して、投資してお金を増やしていった方が良いと思っています。
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自分がなぜ生命保険関連の記事を書いているかというと、保険は、マイホームに次いで人生で2番目に高い買い物と言われますが、
それだけに必要もないのに入っているのは大きな無駄遣いだからです。
不明瞭な安心を手に入れるように誘導する生命保険ですが、必要ない人が加入することにより、逆に経済的不安を手に入れてしまいます。
「ちょっと負担が大きいから保険の見直しした方が良いかな」と思っている人は、上記の記事もご覧ください。