家が欲しい人の心理について書いた記事にも書きましたが、個人的に理解できない価値観が、「男は家を買って一人前」というものがあります。
持ち家購入に関する記事で、持ち家購入の危険性について書いている通り、お金が充分ない挙げ句に資産運用もしていない状態で家を買うと、どれだけ自由を奪われた人生が待っているかは明白です。
自分なんかは、典型的な家を買いたがらないタイプなので、男は持ち家を買って一人前という価値観が信じられないのですが、未だに根強い価値観のようです。
その証拠に、自分ぐらいの年齢で家を買ってしまった同級生はたくさんいます。特に地元に残った既婚の友達はほとんど買ってしまったのが現状。どうやら、買うのが当たり前と思っているようです。なぜこのような不思議な価値観が根付いてしまったのか、思うところを詳しく書いてみました。
※「夢がマイホーム」であれば、住宅ローンは夢の残骸。そういうことにならないように、家を買うなら億万長者になるか投資のプロになってからが理想です。決断は慎重に。
■持ち家購入の文化は戦後から
よく言われるのが、戦前戦中は借家が多く、持ち家購入の文化が広まったのは高度経済成長期に入ってからという話をよく聞きます。
そう言われてみれば、「男は家を買って一人前」という価値観を持っているのは、50~60代の親世代に多いような気がします。
もちろん20~30代でもそういう価値観を持っている人も多いですが、親の価値観の影響を受けて、そう思い込んでしまっている人が多い気がします。
どういうことかというと、借家が圧倒的に多かった時代に子供時代を生きているため、持ち家に対する枯渇感が根強く残っているのではないかと思うのです。
人間の枯渇感は、欲望を作ります。手に入れることはできない、経験したくてもお金や環境の問題でできない、でも欲しくて欲しくて仕方ない。そういう状態は人間の欲求を極限まで引き上げます。
憧れていたものが手に入ったら誰でも飛び上がるほど嬉しいですよね。団塊世代前後にとって、持ち家とはそういう存在なのかもしれません。
そういう親世代に育てられた20~40代もまた、持ち家を欲しがるというのは、かなり自然と言えそうです。
■縄張り意識
持ち家が欲しいと思うのは別に日本の民族性特有のものではありません。欧米の人だって家を買います。むしろ、欧米の方が大きい家を買います。
日本のお金持ちより、欧米のお金持ちの方がとんでもなくスケールの大きい豪邸を買ったりします。
欧米は日本と違って、中古物件でも新築以上の価値を付けたりするというのもありますが、世界共通で持ち家に対する憧れがあるのは、
なんといっても本能的な縄張り意識によるものです。古代から生き残るために必要な本能ですから、人間の潜在意識に深く根付いていると思われます。
特に縄張り意識が強いのは女性です。だから、夫婦で家を買おうと揉める場合は、奥さんが欲しがっているパターンが多い気がします。
家を買いたくない自分なんかは、この縄張り意識が弱いかもしれません。家を買いたくないのはお金だけの問題ではなく、移動の自由が奪われるのも嫌なので。むしろ、自分の庭みたいなのは作りたくないんです。
■世間体が気になる
この持ち家を持つ男は一人前という価値観は、どちらかというと都市部よりも地方の感覚のような気がします。
生まれてからずっと同じ地方に住んでいると、どうしても世間体というのが出てきます。言い換えれば近所の目です。
地方在住だと、近所の人の情報が、別に求めなくても入ってきます。
「あの人さあ、最近〇〇で」という井戸端会議がその良い例です。自分が将来地方在住でいたくない、住む場所を固定したくないのは、こういう地方独特の閉塞感が嫌だ、というのもあります。
こういうところに住んでいると、「家を買わないのは何だか格好悪い」と思う人も多い気がします。どう考えてもおかしな理屈ですが、実際にそう思っている人はいます。
別に経済的に自立していても賃貸を貫く人はいっぱいいるし、賃貸でも、持ち家にはない幸せを得る事ができます。持ち家を買わない男は格好悪いという価値観を持っている人がいるのは、少し残念に思えます。
その他、「子供のために家を買う」という人も結構いますが、これについては別記事で書いていきたいと思います。
縄張り意識の本能の強い人も多いですから、持ち家の購入を否定する気はありませんが、家を買うデメリットは取り返しの付かないくらい重大です。
「男は持ち家を買って一人前」という感覚は、賃貸派の自分達にとっては首をかしげたくなります。家を買うことによって自由が奪われることは、あまりにも苦しくて辛い人生、そういう人だっているのです。
「男は持ち家を買って一人前」というわけではありません。賃貸だって経済的自由を得ていれば一人前です。
家を買うことで一番やばいのは、巨大な住宅ローンを抱えたが故に、会社を辞められない、子供の教育にお金を使えなくなってしまうことです。
こんな不自由な状態のどこが一人前なのか?「男は持ち家を買って一人前」という感覚を持っている人は、今一度考え直してほしいと思います。