「休んでも疲れが残ったままだ」「今日は1日中何もしないでぼーっとしていたのに、全然疲れが取れない」「気分転換しても疲れが取れない」なんていう経験はないでしょうか?
「世界のエリートがやっている 最高の休息法~「脳科学×瞑想」で集中力が高まる~」(久賀谷亮著、ダイヤモンド社)の冒頭では、次のように書いています。
疲労感とは脳の現象にほかなりません。物理的な疲労以上に、まずは脳の疲労が「疲れた」という感じをあなたの中にもたらしています。その意味では、「脳の休息法」を手に入れることこそが、あなたの集中力やパフォーマンスを高める最短ルートになるのです。(原文まま)
本書で書かれているのは、体のケアではなく脳みそのケア。脳みそはちょっとした息抜きではケアできない。そして、本書で紹介している「脳の休息法」とは、最近耳にすることが増えたマインドフルネスというものです。
この記事の内容
■マインドフルネスとは?
マインドフルネスというと、あのスティーブ・ジョブズも取り入れていた瞑想を思い浮かぶ人も多いかもしれませんが、正式には「瞑想などを通じた脳の休息法の総称」ということです。瞑想もマインドフルネスの考え方の1つということでしょうか。
スティーブ・ジョブズだけではなく、多くの起業家や世界的な大企業が取り入れていると言われるマインドフルネス。
日本の病院の精神科の治療と言えば、まだ抗うつ剤などの薬物療法が主流ですが、既にアメリカでは避けられており、瞑想などの第3世代認知行動療法なるものが生まれているのだとか。
本書の構成は、まずはマインドフルネスを代表する7つの休息法を紹介し、その後は物語形式でマインドフルネスと脳科学の関係を語っています。(著者はアメリカの最先端の精神科の治療の経験もある現役の精神科医です)
この7つの休息法を手に入れれば、最高の休息法を手にすることができ、雑念を取り払って集中力を取り戻すことができ、さらに憂鬱にならない脳になり、病気にならない体を作り出せるとか。
■7つの休息方法の概要
本で書かれていた7つの脳の休息方法の概要を次に簡単に紹介します。
〇マインドフルネス呼吸法~疲れが取れなかったら~
マインドフルネスのベースとなる部分です。注意散漫、無気力、イライラは脳が疲れていることのサイン。一時的な気分転換でも、これらはなかなか無くならないですよね。
よく「過去や未来よりも、今ある幸せに着目しよう」なんてことが言われますが、脳が疲れている状態とは、過去の失敗や未来への不安ばかりに目が向けられ、今の状態に着目できていない状態なのだそうです。
マインドフルネスは、現在に意識を向けるようにし、ストレス低減、雑念の抑制、集中力向上などを図っていきます。
やり方を簡単に書くと、マインドフルネスの基本姿勢を取って目を閉じ、身体の感覚に意識を向けて、呼吸に注意を向けます。
自分も本書に書いてあるようにやってみましたが、即効で雑念が浮かびました。でも、この事実を認識することが重要なのだとか。だから、雑念が生まれて「失敗した」と自分を責めないことが大事だと言います。
〇ムーブメント瞑想~フロー状態に入りたい人へ~
何かをしながら、気付いたら何か考え事をしていることはないでしょうか。本当は別のことを考えたり、心の中を空っぽにしたいのに、なぜか雑念や目先の悩みのことを考えてしまう。
これは集中力の低下をもたらしますが、ムーブメント瞑想を取り入れることで集中力を取り戻し、フロー状態を実現することができます。
〇ブリージング・スペース~ストレスで体調が優れない方へ~
ストレスにより胃痛や肩こりなどの身体の不調を訴えた際に有効な方法です。
ストレスを解消し、ストレス由来の緊張を除去し、身体の不調を改善します。
方法としてはマインドフルネスの姿勢をとって、ストレスの原因になっていることを「1つの文」にします。その文を心の中で唱え、体や心がどう反応するか確認します。
そして呼吸に意識を集中させ、ストレスに反応した身体の部位に空気を吹き込むようにイメージし、呼吸につれてそこがほぐれていく感じを持ちます。
〇モンキーマインド解消法~思考のループから脱する~
モンキーマインドとは、頭の中に様々な雑念が渦巻いている状態。脳のエネルギーが膨大に浪費され、疲労が蓄積されて睡眠の質も低下します。
そんなときは、雑念に対する認知を変えます。繰り返しやってくる思考に「名前」をつけると、ループに陥りづらくなるのだとか。
次の5つの手順に従うことで、雑念が追い払われて集中力を取り戻すだけではなく、深い睡眠や自己嫌悪の回避にも繋がります。
(1)捨てる⇒もう充分!と雑念を頭の外に追い払う
(2)例外を考える⇒雑念のもとになる思考が当てはまらないケースを考える
(3)賢者の目線で考える⇒成功者や尊敬する人ならどう考えるかイメージする
(4)善し悪しで判断しない⇒「判断しない」を意識する
(5)由来を探る⇒雑念のもととなる思考が何度も現れてくる原因は?また、自分の深い願望から考え直す
〇RAIN~怒りや衝動で暴走しないために~
脳に過度にストレスがかかると、怒りや衝動が沸き起こり、暴走的な行動を取ってしまいがちです。イライラして大声で叫んでしまうというのも、一種のその状態ではないでしょうか。
次の4つのステップを意識することで、怒りによる暴走を抑制します。また、ダイエットや禁煙にも効果的なのだそう。
・認識する⇒怒りを認識し、怒りと怒っている自分を同一視しない
・受け入れる⇒怒りの感情を受け入れる。その事実を評価しない
・検証する⇒怒ったときに身体に何が起きているか、身体のどこが緊張しているか?
・距離をとる⇒怒りを突き放して他人事のように考える
〇やさしさのメッタ~どうしても嫌いな人がいる人へ~
人間の悩みの85%は人間関係に由来するストレスと言われているように、誰にでも「嫌いな人」「苦手な人」がいます。
これらの嫌悪、怒り、妬み、憎しみ、恐れといった感情を減らすために取る思考を行い、ポジティブな感情を育成します。
(1)マインドフルネス呼吸法の実践
(2)ストレスに由来する人間を思い浮かべる
(3)「あなたが幸せで心安らかでありますように」などの言葉を心の中で唱える
〇ボディスキャン~身体に違和感、痛みがある人へ~
自律神経が乱れるなど、身体の不調を訴えている人にも、マインドフルネス瞑想は効果的。
(1)横たわって呼吸に注意を向ける
(2)左足のつま先に注意を向ける
(3)呼吸により身体をスキャンする
(4)(1)~(3)のプロセスを全身で行う
※具体的な瞑想の方法や、マインドフルネスと脳科学の関係に興味のある人は、詳細は本を読んでください。物語形式なので読みやすいです。
実践して慣れるまでは結構時間がかかりそうな気がしますが、上記に書いたように、まずは雑念を認識することが大事とのこと。
疲れが全然取れない、ストレスが改善されない、悩みが軽減されないという人にはヒントの詰まった一冊だと思います。
また、マインドフルネスや運動以外の、脳の疲労を癒す方法も書かれています。この部分に特化した感想も書いています。