ミステリーというジャンルは苦手じゃないけれど、どこか読み始める前のだるさを感じることがあります。どういうことかと言うと、ミステリーは分厚い本が多い印象があるからです。
代表的なところが、京極夏彦さんの魍魎の匣だと思います。たしか1000ページを超える分量で、文庫本が出た当初は、あまりの分厚さに引いてしまい、いつか読んでみたいと思いつつ、まだ買ってすらいません。
ただ、ミステリーは分厚いかわりに読み始めると止まらなくなり、速いスピードで読み進めることができるので、ページ数の割に早く読み終わることができるので、挫折することはあまりなかったりします。
読み終わった時に、分厚い本を早く読み終えたという充実感を得られるのも、またミステリー小説の醍醐味かもしれません。話が面白いから、満足感が大きいんですよね。
ミステリーというと、見事なトリックと、それを見破って時間を解決することを重視した、いわゆる純粋なミステリー小説と、人間ドラマの要素が高いミステリー、両方あると思うのですが自分は圧倒的に後者の方が好きですね。
トリックを楽しみたいのではなくて、人間ドラマを読んで心を震わせたい気持ちがあるからです。今回読んだ貴志祐介さんの「青の炎も」、ほぼ人間ドラマのミステリーです。しかも、自分好み(?)の悲しい話です。
映画化されて10年以上経っている比較的古い小説なので、時代背景が今と少し違う部分もありますが、この小説はかなり気に入りました♪映画版はまだ見ていないので、いずれレンタルして見ようかと思っています(^^)
〇家族を守るために完全犯罪を企む少年
母親の元旦那(主人公の元父親)が突然主人公の家に居座って、金をせびったり、妹に手を出そうとしたり、暴力を振ったりとやりたい放題。それでも警察は動いてくれず、法の無力さを感じた主人公は元父親を完全犯罪で葬り去ろうとする。
大好きな家族を守るために、殺人者になる少年の悲しい運命。トリックも見事ですが(よく10代の高校生がこんなの思いついたな)、こんな状況に追い詰められる主人公の少年と、その家族の悲しい運命に、少し切ない気持ちになります。
どう考えてもろくでなしの元父親を法的に追い出すことができない虚しさ。そして黙って仕打ちに耐え続ける母親。
母親が無理に追い出そうとしない理由が、殺人の後に判明するのですが、これを知っていたら、おそらく少年は殺人者になることはなかったんだろうなあ。これがまた悲しい。
この小説の悲しさは、大好きな母親と妹を守るために殺人に手を染める悲しさの他、真実をしっかりと把握していれば殺人に手を染めることもなかったのに、という悲しさ、2つの意味の悲しみを備えていると感じました。
そして、殺人を犯してしまったがゆえに主人公の選択したラストもまた切ない。人間ドラマとしても非常に完成度の高い小説です。
完成度の高さを感じるのは、主人公の少年を完全な人格者として書いていないという点にも感じます。こんな殺人トリックを思い浮かべるのだから、頭脳明晰とは思うのですが、どこか未熟で、稚拙で外の世界を知らないネット少年のような部分を感じます。
あまり行動的なタイプではないのかな、それゆえに、自分の持っている正しさが暴走してしまったのかな、そういう一面も読み取れ、純粋に主人公に共感するだけの小説になっていないのは、これも作者の思惑のような気がします。
〇いずれミステリーは書きたいけれど……
小説家を目指すなら、いずれミステリー、特にこのような人間ドラマとして完成度の高いミステリーを書きたいという気持ちはあるのですが、どうもまだハードルが高そうな気がします。
結構自分の場合、ドロドロした作品を多く書くようにしているので、殺人を犯したり、犯罪に手を染めたり、自殺するシーンも多いので、こういうノウハウを身につけたい気持ちはあるのですが、どうもトリックを自分で考え出すのが難しくてできない。
なので、ミステリーの要素を入れようとしても入れることができず、純粋な人間ドラマや恋愛小説になることも多いし、自分が書きたいのはそういうジャンルなので、しばらくミステリーには足には踏み入れないかもしれませんが、いずれこういうミステリーの要素を取り入れたいと強く思う小説を構想してしまうような気もしています。その方が話に引き込みやすくなるし。
まあ、まずは小説を出版することが目標なので、未知の領域にチャレンジってのはしばらく後になると思います(・・;)