自分の夢とか希望、自分が成し遂げたいことを語った時に、「どうせ無理だから」と言って無責任に否定する人がいます。
「どうせ無理だから」という言葉は、純粋無垢な子供は使いません。この自信剥奪の言葉を容赦なく浴びせてくるのは、本来子供に夢と希望を与えなくてはいけない大人たちです。
「思うは招く」(植松努著、宝島社)は、この「どうせ無理」という言葉をこの世からなくすという思いが込められた1冊です。
今回は、この本の書評を書きたいと思います。ちなみに、この「思うは招く」という本のタイトルは、著者のTEDのスピーチと同じタイトルです。現段階でYouTubeの再生回数が200万回を超えているので、見たことがある人も多いと思います。
この記事の内容
■やったことない人はできない理由しか教えてくれません
著者は、中学の進路相談のとき、飛行機やロケットを作りたいと言ったら、担任の先生に、「そんなのは東大に行くような頭のいい人の仕事だ。お前の成績じゃあ、とても無理」と、学校の成績だけで判断したそうです。
しかし、その先生はロケットの歴史も航空産業、航空工学、宇宙工学のことなんか知らないのです。このように、無知の人ほどできない理由を教えて「止めとけ」と言ってきます。
少し話はそれますが、投資の世界も同じような話をよく聞きます。投資を知らない人が、投資家に投げかける言葉は決まって「そんな危ないこと止めとけ」です。
自分も言われたことありますが、無視して投資したら、ちゃんと利回りを得ることができました。根拠のない否定ほど、無駄なものはないのです。
投資の話だけではなく、著者が書いたように進路でも同じだし、ビジネスの世界でも一緒です。著者は次のように書いています。(原文まま)
できる方法を教えてくれるのは、やった人だけです。やった人を探せばいいです。そして、そのときに尋ねるのは、「こう考えてみたけど、どう思われますか?」です。
■アーク・プロジェクト
著者が専務を勤める植松電機では、2009年からアーク・プロジェクトというものに取り組んでいるそうです。そこでは、真空技術を生かした省エネルギー化や、フリーズドライ装置による食の冷凍技術や乾燥技術の向上の研究などを行っているそうです。
このプロジェクトのテーマが何が素晴らしいかというと、住宅のコストを今の1/10、食のコストを1/2、そして教育のコストをゼロにすることという点です。
そんな世界が実現したら、もう我々はお金に振り回されて嫌な会社に執着することもなければ、家計苦に苦しむことはなく、ストレスフリーな社会に生きることができます。素敵なプロジェクトだと思います。
■自分が今持っている力で何ができるのか
著者の経験から言うと、お金がないと嘆く人の多くが無駄な出費をしているとのこと。これはたしかにそう思います。
頻繁に車は買い替えるし、身の丈に合わないブランド品は買いまくるし、挙句の果てに結婚したら大きな家は買うし。これでお金が足りないのは当然です。
「足りない」ことにフォーカスすると、ずっと「足りない」ことに振り回されてしまう。お金の奴隷になっている人の多くは、そんな不幸の連鎖に陥っています。
それよりも、自分が今持っている力で何ができるかを考え、その力を増やすかを考える。それだけで、不幸感は消えていくそうです。
■人生は仕事だけではない
「そんなことしてる暇があったら、仕事しろ」と、僕もよく言われます。でも、この言葉はとても危険です。(中略)家庭も、子どもと過ごす時間も、「無駄」ととらえることだってできてしまいます。だとすれば、人生はとてつもなく暗いものになります。
まさにその通りだと思います。大事なことは、仕事以外のことから学べることも多いのです。常に仕事しなければいけないという思い込みは、必ず精神を破壊させます。
■その他印象に残った文(原文まま)
あきらめてしまうと、どんなに素敵な幸運も、後悔の対象にしかなりません。それは、自分の人生をとても暗くしてしまいます。
誰かに「やめなさい!」「無理だ!」と言われて「はいそうですか……」とやめてしまったら、自分の人生は、誰かのものになってしまいます。でも、その誰かは責任なんて負ってはくれません。
小学生にはいろんな博士がいますが、僕は紙飛行機博士、大きくなるとみんな博士をやめてしまいますが、僕はやめませんでした
スクールの語源はギリシャ語の「スコレー」ですが、これは「暇」という意味です。暇があるから学べる、ということかもしれません。
努力は、気がついたらしちゃっているものです。
「普通の会社に入って、普通に結婚して、早く親を安心させてくれ」そんな言葉がまかり通り、普通じゃない道を選ぼうとすればあらん限りに否定される。そんな社会は、あまりよくない気がします。
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同じく植松努さんの著書、「好奇心を天職に変える空想教室」と「NASAより宇宙に近い町工場」の書評です。共通する箇所もありますが、子供の頃の純粋な気持ちを呼び起こして奮い立たせてくれる、そんな素敵な1冊です。