なぜ今になって田中角栄に関する本が売れているかわかりませんが、前々から昭和史には興味がありました。まだこのブログでは書いていませんが、昭和のフィクサーや政治家に関する本を昔は読んでいました。
野心と欲望に満ちていて、成し遂げる規模も大きい。決して綺麗事だけで生きているわけではなく、背後には黒い力もうようよしてますが、それを打ち消すほどのどっしりとした貫禄と自信があり、迫力があります。
間違いなく田中角栄もその中の1人で、歴代の総理大臣で、これほど国民にインパクトを与えた人はいたでしょうか?
天才(石原慎太郎著、幻冬舎)を読了しました。上記のとおり、田中角栄は伝説に残る男の1人だったと思いますが、果たして本のタイトルの通り天才だったのでしょうか?
そして、これほど大きなお金を動かし、大きな権力を行使し、総理大臣を辞めてロッキード事件で前科者となってもなお、キングメーカーとして政界に大きな影響を与えた田中角栄は、幸せな人生を送ったのでしょうか?
■天才というよりセンスの人
この「天才」というタイトルに同意する一方で、少し違和感も感じました。
読んでいて感じたのは天才というより、センスの人という感じがしたからです。敢えて天才という言葉を使うのであれば、人を見る目や世渡りといった人心掌握術の天才。
そして、学歴がなくて土方などの泥臭い仕事を経験して養われたのは、常に国民目線でいること、国民は何を望んでいるかを見抜く嗅覚ではないでしょうか。
政治家になるべくして生まれてきた男かもしれませんが、学歴がないからこそ、政治家としてのセンスを磨いてきたのではないでしょうか。
成功と学歴は相関関係がないという話をよく聞きますが、田中角栄もその一人。実業家でいえば松下幸之助や本田宗一郎もそう。逆に学歴がなかったからこそ、常に国民目線を忘れずにいられたのかもしれません。
■自信と貫禄
やはり読んでいて感じるのは、田中角栄という人から醸し出される貫禄と圧倒的な自信です。
とにかくやることに迷いがなく、男気があり、筋が通っています。本心を曲げることない姿勢は、日中国交正常化に大きく発揮されています。
本書では、田中角栄がいかにもロッキード事件でははめられたような書きっぷりになっていますが、もし石原慎太郎氏の書いたことが本当であれば、この圧倒的にブレないところが、アメリカの怒りを買ってしまったのは言うまでもないでしょう。
■幸せな人生だったのか?
キングメーカーとか呼ばれている政治家や、その背後にいる黒幕たちの人生を読んでいて感じるのが、本当に幸せな人生を生きたのか、ということ。
田中角栄も、そう思わせる人の1人で、脳梗塞で倒れた晩年は、どこか寂しさも漂っています。読めばわかりますが、案外孤独な人生です。
家族関係も決して良好と言えるものではなく、竹下登や金丸信など、結局田中角栄から離れていった人もいる。
人との繋がりって、そんなにもろいものなのかな?と読んでいて感じてしまいました。
石原慎太郎氏の天才を読んでいて感じたのは、田中角栄はお金や権力は手にしたかもしれませんが、愛という要素が少し薄かった気がします。
世渡りの天才と言えるほど、人を見抜く能力と、本気で日本を変えようとする野心とリーダーシップは人並み外れたものがあるのに、なぜそうなってしまったのか。
これだけ日本列島に大きな影響を与えたのだから、せめて晩年は愛に満ちた生活を送ってほしかった。でも、本書を読む限りでは、それは叶わなかったのは、少し残念な気もしました。
■田中角栄はB型
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ちなみに、余談ですが、田中角栄の血液型はB型です。B型の成功者について書いた記事です。良かったら併せてご覧ください。