2012年12月、大阪の高校の名門バスケ部のキャプテンが度重なる体罰に耐えかねて自殺した事件。当時、連日のように報道されていたので、覚えている人も多いと思います。「許せない」という怒りの感情が出てきた人も多いでしょう。
今回、この事件のルポタージュ「桜宮高校バスケット部体罰事件の真実」(島沢優子著、朝日新聞出版)が出版されていることを知り、読んでみました。今回はその書評です。
■体罰ではなくて虐待
この事件で、「体罰を行って良いのか、悪いのか」という議論が出てきたような気がしますが、このルポタージュを読む限り、この事件の中身は体罰どころの騒ぎではないです。
この事件に関する感想を、テレビで「体罰ではなくて虐待だ」と言った人もいたみたいですが、まさしくその通りであると感じました。
この本に書いてあることが真実であれば、もはや体罰以前の問題で、被告人であるバスケ部の顧問のやっていたことは、明らかにいじめであり、虐待に該当します。夫婦間であれば壮絶なDVに該当し、企業であればパワハラを超越している。
自殺したキャプテンを集中的に暴行するだけではなく、「試合に出さないぞ」と脅したり誘導しようとしたりと、卑劣な側面も伺えます。
■19年も暴力教師を続けた異常性
今回問題となったバスケ部の顧問ですが、19年間顧問を勤め上げ、しかもインターハイ出場の実績もあり、かなり信頼の厚かった顧問だったようです。
しかし、体罰を超越した異常な暴力は、これまでもずっと伝統的に行われていたのこと。これを今まで学校も父兄も黙認していたという。
しかも事件が起きたあとも、バスケの新人戦に出場しようとしたり、顧問の先生をかばおうとした動きもあった事実が、この本ではしっかりと書かれています。
学校社会という、非常に閉鎖的な組織空間が生み出した、カルト宗教も驚くほどの異常な事件です。
■やはり体罰は許されない
この事件は、もはや体罰という言い方すら生易しく聞こえるほどひどい事件だと感じますが、そもそも個人的には体罰すら認めたくない。
そりゃ冗談混じりで軽く小突いたりするなら別として、士気を高めるために怒鳴ったり殴ったり蹴ったり、罰を与えたり、そんなことが良いわけがない。
それは教えられる側はひどく心を傷つけるからです。そして、厄介なのは、教えられた生徒が、今度先生とかコーチの立場に立った時です。
体罰によって教えられたことが正しいと勘違いしてしまい、自らも体罰を使って指導してしまう。これは負の伝承としか言いようがない。
暴力から生み出されるのは暴力でしかないわけです。これによって強い結束は生まれないし、昔のスポ根ドラマのような感動もないわけです。向かう先は破滅だけです。
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これは何も体罰に限ったことではありません。ビジネスにおいても同じことが言えます。
部下を怒鳴ったり脅したりして指導したつもりになっている上司は本当に多いし、何かあれば文句を言ったり批判したりしかしない人は多いです。
学校以上にグロテスクな閉鎖的な空間である企業社会において、このようなことは日常茶飯事ですが、これが虐待に匹敵するような行為であることを自覚してほしいものだし、自分も気をつけていきたいと思います。