狩りをしながら自給自足したい人へ|【書評】わたし、解体はじめました

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2016-06-06 20.52.20

東日本大震災をきっかけに、自分の生き方とか価値観を見直した人も多いと思いますが、その中の選択肢として、農業したり、狩りをしたりと自給自足を考えたことのある人も多いのではないでしょうか?

今回紹介する「わたし、解体はじめました ─狩猟女子の暮らしづくり─」(畠山千春著、木楽舎)の著者も、震災直後の父親の言葉をきっかけに、会社を辞めて狩りを始めて、自分の暮らしを自分で作るような活動をしています。

ちなみに、この本の著者は「ちはるの森」というブログでも知られています。実際に動物を捕まえて解体している記事なんかもあるので、興味のある人は併せて見てみてはどうでしょうか?

■自分自身が絶対に生き抜くこと

著者が狩猟女子になったきっかけは、冒頭でも書いたように東日本大震災です。当時東京の会社員だったみたいですが、東京もかなりパニックになり、買いたいものも買えず、ミネラルウォーターすら手に入らない状態。お金を使っても、肝心なモノが手に入らないことを実感します。

このときに緊急で家族会議をしたみたいですが、その時の父親の言葉が著者を突き動かしたようです。

「家族を守りたいなら、まず自分自身が絶対に生き抜くこと。生きていたら必ず会える。そうすれば、家族を助けられるから」(原文まま)

そもそも前々から先進国特有の大量生産、大量消費の暮らしには疑問を感じてたらしく、自給自足に関する関心は前からあったのだとか。震災がきっかけで背中を押されたみたいです。

■著者が初めての解体で感じたこと

著者が生まれて初めて解体したのは鶏でした。しかも生きた鶏を自分で絞めて首を切るところからです。

「鶏は首を切っても何十秒かは走り回る」というのを、聞いたことある人も多いと思いますが、これを実際に体験した人はほとんどいないのではないでしょうか。

生きた鶏を絞めて、解体して料理するまでの一連の工程は、かなり手間があって、自炊すらしない自分には、少し敷居の高さを感じました。しかし、その工程を経て著者が感じた次の言葉には、共感を感じます。

ゆっくりでもいいから、暮らしの中のいろいろなことをまず自分でやってみて、自分の体で感じて、自分の頭で考えて、生きていたい。命のことを考えることも、そのうちの一つです。感覚のない人生なんてつまらない。常識や「当たり前」にとらわれずに、自分の感覚のアンテナをピンと張って、感じることをやめないで暮らしていきたい。改めてそう思いました。(原文まま)

■育てて食べるを実践した話に感動

印象的だったのは、烏骨鶏を実際に飼って、育てて、それを自分で絞めて解体して食べるという話。

あとで自分で殺して食べる鶏とわかっていながら、自分で育てていくうちに愛着を感じるというのは、リアルで痛々しくもあり、それでいて人間味を感じます。

何年も前に、妻夫木聡が出ていた「ブタがいる教室」という映画を見たことがありますが、そのときに感じたことに少し似ているかな。

実際に絞めて食べる日に著者は涙をボロボロ流したようですが、それでも絞めて食べるという決断を下します。

その時の感情というのは、命の大切さだったり、食べることへの感謝だったり、いろいろあるかもしれませんが、実際に育てて食べるという経験をしないと感じられないものもあると思います。

■自分の暮らしを自分で作る自由

自分はズボラな性格だし、自炊もしない人なので、まだ狩猟生活や自給自足には敷居の高さを感じますが、一方で興味関心を覚えるのもたしかです。

狩猟生活には生きた動物を捕まえて殺して、運んで解体して調理する手間と時間を感じますし、農業だって、野菜を育てる大変さがある。

これは自分はやったことないし、農家の息子でも猟師の息子でもないのでわからないことも多いですが、こういった生活には、一種の自由を感じるのです。

自分の食べ物を自分で調達することは、自分の暮らしを自分で作ること。これは一種の自立だし、束縛のない自由な人生の一種です。

一方で、大量生産、大量消費の生活には、どこか息苦しさを感じます。不便さを感じないですが、自由ではない。経済的に困っていないが、会社の仕事に追われている人なら誰もが感じる生きづらさ。一体何のために生きているのだろうという感覚。

自給自足、狩猟生活には、そんな息苦しさから解放され、生身で生きていることを実感して当たり前だと思っていたことに感謝できて、そして自由に生きることのできる手段の1つなのかもしれません。

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【関連記事】青森県の狩猟体感バスツアーに申し込んだけど抽選から漏れた~

今回紹介した「わたし、解体はじめました」は福岡県糸島市が舞台になっていますが、狩猟に対する関心は密かに全国的に広がっているかもしれません。

青森県でも2015年に狩猟体感バスツアーというのが県の企画で行われていました。残念ながら抽選に漏れて参加できませんでしたが、今後も実施されるのではないかと思います。良かったら併せてご覧ください。

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